『屍人荘の殺人』の続編
ミステリーマニアによる、
ミステリーマニアのための、
ミステリーマニアのミステリー小説
本と出合ったきっかけ
『屍人荘の殺人』の映画が面白かったので原作はどんな感じか興味がありました。
映像にするときには仕方なくカットしたり、演出の方向性が原作読者のイメージと離れることがしばしばあるので、映像化される前にチェックしようと思いました。
この記事のキーワード
【ミステリー】【叙述トリック】【クローズドサークル】【ホームズ&ワトソン】
本から知ったこと
Who/How/Why done it? フー/ハウ/ホワイ ダニット
犯行方法の解明を重視したミステリー小説で謎解きのパーツになる部分
クローズドサークル
外部との往来、連絡が絶たれた状況
本の感想
『屍人荘の殺人』の続編となる作品。葉村と比留子2人の関係がどうなるのか期待して読み始めました。
この本では序盤で「魔眼の匣」という場所がミステリー小説の舞台環境として完成します。
前作はオープンな環境が特殊な事情によって閉じられることで環境が完成、その状況が犯人にとって合理的に逆転する話の面白さがありました。
今回は「予言」が装置として舞台を演出します。
ミステリー小説はノックスの十戒、レナードの十原則などがあるように一般的なルールがあります。
必ず守らないといけないものではありませんが、「予言」などの超能力はある種のタブーです。
あまりにも超常現象によって出来事が起こったり、解釈されてしまうとそれはSFになってしまいます。
ミステリーの限度ライン上で話を展開することで、ストーリーが閉じていき、先の展開が読みやすくなるので読者は想像を広げやすくなります。
それは限度ラインを越えないことを、暗黙のうちに作者と読者で了解することで成り立ちます。
超常現象は出てくるけど、ミステリーの背骨は折らないことが前作から約束されています。
事件の下地では葉村と比留子の関係、それぞれの思いが展開されます。
比留子のことは葉村に、ホームズの苦悩はワトソンに投影されています。
天才、自己中心的、もって生まれた呪いとも表現される比留子の宿命が前作から引き続き描かれていますが、一方でみんなと同じように苦悩するふつうの女の子として比留子が描かれる場面があります。
ミステリーの原則に基づいて発生した事件の謎を解く比留子の姿は受動的とも取れます。
今回は自分自身の宿命に挑む、守りながら攻める比留子が登場します。これは前作での後悔が引き金になっているのだと思います。
能動的、あるいは攻撃的な比留子の姿勢は次回作品でのモリアーティの登場を予感させます。
自身の呪いに対する思いや葛藤について、次回作品で更に深掘りが進むことを期待しています。
アクティブなホームズと呪いの権化モリアーティとの対決、そこに斑目機関がどのように関わってくるのか楽しみです。
「魔眼の匣の殺人」映像化のときには前作と同じキャスト、スタッフでの制作を強く願っています。
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