東急グループを率いた五島慶太氏の構想 第二の東京をつくる
多摩田園都市は東急グループを率いた五島慶太氏の構想から始まった都市開発計画のエリアです。
五島氏は東京の南西に広がる多摩丘陵地帯に人々を呼び込んで定着してもらい、第二の東京をつくることを目指していたようです。
多摩田園都市は五島氏が「城西南地区開発趣意書」を発表したことから始まります。
1953年の当時から五島氏は東京が過密状態になり、快適に暮らせる住宅が不足することを予測していました。
都市を開発するだけでなく、理想の都市を実現するため若手建築家を招いて構想を膨らませていました。
広大な土地に交通網を発達させて、立体的な経路で接続することで渋滞のない街を設計していました。
駅の近くには高層ビル、マンションがランドマークとして建てられ、低層部分には買い物ができる施設が準備される、駅を離れるときれいに整理されて住み心地の良い住宅街が街路から広がっていく、美しく機能的な都市を目指していたようです。
開発前の多摩丘陵地帯は直線距離で東京に近いにもかかわらず、森林や田畑が大半の未開の土地でした。
住宅地がいくつか点在していたそうですが、利便性が悪いため数は多くなかったようです。
いま現在でも東京西部のほうが生活していくうえで魅力的だと感じることも多いので納得です。
東急ターンパイク構想
多摩田園都市は二子玉川駅から本厚木駅までを開発エリアとして設定していました。
エリア開発の第一歩として、五島氏は鉄道ではなく有料道路の新設を想定していました。
結果として、この構想は実現しませんでした。
東急ターンパイク構想とは
渋谷と江ノ島を結ぶ自動車専用道路
東急ターンパイクは渋谷から二子玉川、保土ケ谷、大船、辻堂を通って江ノ島へ向かう。約47キロの高速道路だった。”この地方を開発するには玉川から荏田、鶴間を経て座間、厚木に至る間に電車かまたは高速道路をつくることが必要
東急の五島昇社長が日本経済新聞の「私の履歴書」でこう書いている。
「父慶太が、のちに多摩田園都市と名づけられた東京の城西南地域の開発構想をぶち上げたのは昭和28年だった。二子玉川―厚木を結ぶ高速道路を動脈とする大規模な地域開発計画だった。しかし、肝心の道路建設の免許がなかなか下りない。いらいらしていると建設省から第三京浜道路構想が出てきた。このため、高速道路の建設はあきらめざるを得なくなった。鉄道に切り替えて31年に建設計画を申請し直した」
日本経済新聞 第三京浜はなぜ玉川止まりか https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65490780X21C20A0000000

日本道路公団による国家事業としての有料道路建設が進められる一方で、五島氏の計画は運輸省、建設省の縦割り行政によって承認がまとまらず頓挫しました。
代替プランとして鉄道に切り替えて都市開発を進めた結果、いまに至ります。
現在の多摩田園都市

https://www.tokyu.co.jp/company/business/urban_development/denentoshi/
神奈川県の内陸を進む縦貫ルートはいまだに課題が多いです。
東海道の海沿いのルートは歴史的に古い道であると同時に埋め立てを行うことで拡充が可能です。
内陸は私有の土地がまだら状に広がっているだけでなく、丘陵、山林、河川など障害物が多いことも障壁となります。
東急田園都市線が南北に神奈川県中央を走り、まるで競うように国道246号線、第三京浜が通っています。
JR南武線、横浜線、横浜市営地下鉄が東西に走ることで網の目状に交通路ができています。
各社が曲がって接続しているため、鉄道網の効率はやや不完全ですが、丘陵地帯にある山林や河川を避けて進むためには仕方のない程度と言えるかと思います。
東急グループが多摩田園都市をまとめたサイトに開発がすでに完了していることが記載されています。
2006年3月の犬蔵地区(川崎市宮前区)の土地区画整理事業の完了によって、開発はひとつの区切りを迎えました
東急多摩田園都市とまちづくり https://www.tokyu.co.jp/company/business/urban_development/denentoshi/
実態としても都市開発と交通網の整備はほとんど完了した状態と言えるでしょう。

多摩田園都市構想はまず、多摩丘陵という「未開の地」を開発して駅と街をつくりました。
駅を核として街路が広がっているため、駅から遠く離れたところは多摩丘陵の頃からあまり変わっていないようなところも多くあります。
そのようなところでは見た目がきれいに整っていても、地形は大きく変えられていないので、自然災害に弱い部分が残っている可能性があります。
2019年の台風被害は記憶に残っています。
幹線道路、鉄道路線などのルートから取り残されたところがあります。
いわゆる陸の孤島と呼ばれるエリアです。
駅から歩くのには遠すぎて、車で移動する距離ではない、あるいは渋滞がひどいので利便性が悪い、そんなところです。
家探しサイトで安い順にリストアップすると必ず「バス停から〇〇分」と記載されているようなところです。
駅から歩ける距離の住居は代々引き継がれていくため、新しく家を持ちたい人は妥協せざるを得ない状況にあるかと思います。
割安な物件があってもリスクを精査する必要があります。
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